自動発注システムの特徴

FAQ

 

小売業界においても、様々なタイプの自動発注システムが利用されています。しかし、その多くは、「自動」と言いつつも、実装している機能には、大きなレベル差があります。小売業のマーチャンダイジングを統合的に支援することができるのは、レベル3以上の需要予測型自動発注システム(CPMシステム)です。

CPMの在庫管理の詳細については、下記サイトをご参照ください。

  1. 箇条書き項目CPMを支える在庫管理の技術

  2. 第一回:在庫管理の基本ロジックと経済的基準在庫について

  1. 箇条書き項目レベル0:セルワン・バイワン方式

商品の販売累計が一定数を超えたとき、または、所定の最低在庫数を割ったときに、自動的に発注を行うやり方です。 基本的には、売れた分だけ補充する考え方なので、需要予測は行いません。補充パラメータの設定は、発注担当が、売場を見ながらハンディ・ターミナルを使って、経験に基づいて一つずつ設定していることが多いです。ロジックが単純なので、簡便にシステムを導入したいときによく用いられる方式です。安直に導入して問題を抱える場合が多いので、少し詳しく説明しましょう。やり方は至って単純です。

  1. 1.単品ごとに発注ロットを登録。

  2. 2.販売数を累計。

  3. 3.発注日の販売累計数が発注ロット以上になったら、販売累計数を発注。

  4. 4.販売累計数を0にリセット。

  5. 5.(必要に応じて発注ロットを変更)

  6. 6.2に戻って繰り返す。

売れた分だけ必ず補充されるので、手発注をしていたころと比べると欠品も少なくなり、整然と商品が並ぶようになります。一見良さそうですが、次第に死に筋品の在庫がヘドロのように溜まって、売場の生産性が低下するという問題点が浮き彫りになってきます。

まず、発注ロットを小さく設定していると、少しずつでも毎日のように売れている商品ならば、発注日ごとに必ず発注がかかってしまい、品出しの手間が増えますし、物流効率の低下をもたらします。

そこで、発注ロットを大きくすると、今度は、死に筋品の滞留在庫が増加し始めます。死に筋品がやっと売り切れたところで、大きめの発注ロットで発注がかかってしまい、欲しくもない商品が余分に補充されることになります。

しばらくすると、死に筋品の滞留在庫が知らず知らずのうちに増えていくようになります。いわば、コレステロールで新陳代謝代謝の悪い脂肪体質に陥ってしまうわけです。

そこでなんとかしようとして、Dランク品の発注ロットを強制的に1に変更するといった修正を加えることになります。考える方向性は間違ってはいませんが、死に筋品の発注ロットを小さくする云々の前に、そもそも、その商品の改廃を先に検討すべきです。その上で、継続すると判断した商品について、発注ロットを小さく変更するべきです。

運用の中でこれをしようとすると、商品の販売動向を見ながら、発注ロットを適宜修正していく作業が必要になりますので、手発注をしているのとほとんど変わらなくなってしまいます。システム的に対応するには、発注ロットを変更する何らかのロジックが必要になります。

ところで、発注ロットを変更するということは、実は、発注点と基準在庫を求めることと同じ(発注ロット=基準在庫−発注点)ことなのです。つまり、この検討に入った時点で、レベル1以上の自動発注の導入に進むことになります。

  1. 箇条書き項目レベル1:売れ数比例方式

レベル1以上の自動発注システムは、需要予測の機能を持っています。しかし、このレベルの需要予測のロジックは、移動平均法や指数平滑法などのシンプルな手法が採用されています。需要予測に対して基準在庫を計算し、発注点を割ったとき、または、所定の発注日に基準在庫まで補充を行うやり方で発注を行います。

問題点としては、需要予測の手法がシンプルすぎて、小売業の需要特性に十分に対応できないことが上げられます。特売やイベントなどの販売実績を除去する必要があるので、商品の需要特性を包括的に捉えることができません。

また、最適な安全在庫日数を計算するロジックがないという問題点もあります。安全在庫日数の設定は、発注担当の恣意的判断に委ねられているため、個々の商品について、適正かどうかレビューし、必要に応じて修正しなくてはならないという手間がかかります。

  1. 箇条書き項目レベル2:サービス率方式

このレベルの自動発注システムは、需要予測システムが算出した需要分布に対して、サービス率(欠品しない確率)がある想定%以上になるよう安全在庫を算出するやり方で発注を行います。需要のバラツキとその分布確率を考慮して安全在庫を決定するので、統計的在庫管理とも呼ばれます。需要予測に関しては、標準的な統計パッケージの機能を流用しているものが多い。

問題点としては、需要予測に標準的な統計パッケージの機能を流用するため、利用する統計手法によっては、 小売業の需要特性に十分に対応できないことが上げられます。また、最適なサービス率を計算するロジックがないという問題もあります。サービス率を何%にするかは、発注担当の恣意的判断にまかされており、設定値によっては、基準在庫の値がかなり変化することがあります。そのため、個々の商品について、サービス率が適正かどうかレビューし、修正することが必要になる。サービス率を見直すのに相当な労力を伴うわりには、発注精度が上がらないとという指摘があります。

  1. 箇条書き項目レベル3:相対最適所要量方式(CPMシステム)

上記で明らかになった問題点を統合的に解決する方法が相対所要量方式です。需要予測には、多変量系列相関モデルを用いることで、主要なコーザルの影響、季節性やトレンド変動をモデル化することができるので、小売業における需要予測システムとしては、実践レベルでかなり満足できるものになります。

基準在庫は、相対最適所要量に基づいて算出されます。相対最適所要量方式ならば、売場の期待利益を最大化する基準在庫が自動的に設定されるので、売れ数比例方式やサービス率方式のようにパラメータを適宜修正しなければならないという問題から解放されます。特売時や曜日変動などのコーザルの影響を考慮した自動発注を行うことが可能になり、最小の業務負荷での運用が可能になります。

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