需要予測システムのための統計手法

FAQ

 

移動平均法
指数平滑法
ホルト線形法

時系列データに対して、移動平均や指数平滑を施すことで、需要変動に追随しながら、予測を行うことができる。販売トレンドの変化に対しては、徐々に変化を取り入れながらトレンド変化に追随性のある予測値を生成することができる。特に、ホルト線形法はトレンド変化に関しては、追随性の高い予測値を生成することができる。しかし、これらの手法は、いずれも季節性を考慮した予測値を生成することはできない。さらに、特売、イベント、曜日変動等のコーザルによる影響を考慮することもできないので、通常は、コーザルの影響を受けているデータはあらかじめ除去し、平時の需要予測を行う用途に限定して利用される。もし、コーザル・データを除外しない場合は、特売後に需要予測が大きくなるなどの問題が生じる。

ホルト線形法がトレンドしか考慮できないのに対して、この方法では季節変動とトレンドを考慮した予測値を生成することができる。外部で作成した季節指数を利用することもできるので、時系列データのサンプル数が少なくて季節指数が作成できないときには有用な手法である。しかし、コーザルの影響は考慮することができないので、その点に関しては、上記の手法と同様の欠点を有する。

時系列データが周期的変化やトレンド変化があるときに、その影響を考慮した予測を生成することができる。毎月10日のイベントのように実施間隔が異なっていたり、不定期なコーザルによる需要変化があったりすると系列相関を誤って認識し、需要予測の精度が低下する。特売、イベント等のコーザルの影響は考慮することはできないので、上記の方法と同様な問題が生じる。季節性への対応については、自身の時系列データに基づいて季節変動をモデル化するので、少なくとも1年以上のデータが必要になり、計算時間も多くかかる。モデル化のプロセスを確認しながら対話的に操作することが前提なので、モデル構築の自動化に向かない。季節指数を外挿できないので、小売業の需要特性のように季節変動が毎年前後する場合は、実践的にはあまり役に立たない場合が多い。

時系列データが特売、イベント、曜日変動等のコーザルに影響される場合に、回帰分析法を利用するとコーザルの影響を考慮した予測ができるようになる。複数のコーザルを用いるときは重回帰分析という。回帰分析法は、トレンド変化や季節変動のない定常的な状態を想定しており、時系列データのように非定常的なデータで予測モデルの誤差項に系列相関が発生する場合は、予測モデルの精度が低下する。また、コーザル間の相関が高い場合(多重共線性)は、モデル全体としてパラメータの有意性の検定が甘くなって、不要なパラメータが採用されたり、符号が逆転したりするなど、論理矛盾のあるモデルが生成されることがあり、予測精度が大きく低下する。実用的に利用するには、時系列データの系列相関を除去した上で、符号付き説明変数選択のロジックや多重共線性があっても安定したモデルを生成するリッジ回帰という手法を用いる必要がある。

回帰分析を行う際に、時系列データに1次の系列相関がある場合に使用する。コーザルの影響をモデル化できる重回帰分析の優位性を利用しつつ、時系列データに1階の系列相関がある場合に、重回帰分析の精度が低下する問題を解決することができる。

この方法は、時系列データに系列相関が検出された場合に、複雑な系列相関モデルを用いて系列相関を除去することで、コーザルの影響、トレンド変化や季節変動を考慮したモデル化を行う方法である。このレベルの統計モデルは、標準的な統計パッケージでは提供されないので、カスタム開発を行うことが不可欠になるが、一方で、不均一分散、分布ラグへの対応など、予測精度を向上させる様々な工夫を実装することができるので、頑強で精度の高いモデルを構築することができ、小売業の需要予測に最も適した方法である。

ニューラルネットワークは、コーザルを考慮した予測ができる点で、重回帰分析法の代替手段となる手法である。しかし、重回帰分析においては、モデルの定式化とそのパラメータの推定値によってモデルを解釈することができるが、ニューラルネットワークにおいては、ニューロン同士が複雑な接続構造をしているために、各ニューロン間に与えられた重み付けからモデルの構造を解釈することが困難であり、計算過程がブラックボックス化してしまうという問題がある。さらに、実績データに過剰に適応する過学習の問題があり、データに異常値が含まれていたりすると、過剰に当てはまり過ぎて、たまたま売れた実績が何らかの要因と結びついておかしな予測が出力されることもある。自動発注のような日々のデータ変化に応じて頑強な予測を行わなければならない状況のもとでは、安心して使えないという問題がある。

小売業の需要特性に応えた需要予測をモデルを構築するには、どのような統計手法を用いる必要があるか理解することは重要です。現場から、「どうも変な発注がでることが多いので、毎回、発注数の確認と修正を欠かすことができない。」といった不満が上がっているならば、間違いなく、指数平滑法や重回帰分析法といったシンプルな統計手法を用いて需要予測を行っていることに起因しています。小売業の需要特性は、それほどシンプルではないので、シンプルすぎる手法では精度の高い予測をすることはできません。小売業の需要特性に応えた需要予測を行うには、「多変量系列相関モデル」を用いる必要があります。

ホルト・ウィンタース法

ボックス・ジェンキンス 法 (ARIMA)

回帰分析法

コクラン・オーカット法

プレイス・ウィンステン法

多変量系列相関モデル法
(CPMが採用している方法)

ニューラルネットワーク

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