三田洋幸の考えごと
三田洋幸の考えごと
前回のブログでは、販売機会損失の考え方を整理しましたが、今回は、具体的な計算方法を示したいと思います。
まず、下の表をご覧ください。前提条件として、商品の売価、原価、品切れ損失単価および売れ残り損失単価を決めます。品切れ損失単価とは、商品が品切れしたときに生じる商品1個当たりの損失です。ここでは、注文待ちは発生しないと仮定すると、品切れによって粗利を稼ぎ損なうことになるので、品切れ損失単価は、粗利と同じ30円ということになります。次に、売れ残り損失単価ですが、この商品は販売期限が数ヶ月と長く、今日売れ残っても、在庫を持ち越して販売することができると仮定します。すると、今日売れ残ったことによる損失は、在庫を維持するためのコストだけということになるので(おにぎりのように今日中に売らないと廃棄するときは原価ロスが発生します)、原価に資本コストをかけて0.019円と想定しましょう。

さて、この前提の下で、販売機会損失を計算してみましょう。まず、需要分布について簡単に説明すると、この商品の1日当たりの需要は、95個売れる確率が0.001(千日に1日くらい)、85個売れる確率が0.049(百日に5日くらい)、…というように、20個〜80個っくらいの範囲でばらつきながら平均50個売れることを示しています。
いまこの商品の最適在庫数が90個と算出されていたとしましょう(最適在庫数の求め方については、拙著をご参照ください)。すると、下の表の在庫が90個のときの列に示されているように、95個の需要が発生したときは5個の品切れが発生することになります。ただし、95個売れる確率は0.001とほとんどゼロなので、品切れ数の期待値を計算すると5×0.001+0×0.049+0×0.1+…+0×0.001=0.005個、金額ベースでは0.005×30=0.15円ということになります。いずれも僅かですが、これが最適在庫数を保有したときに発生する計画された販売機会損失ということになります。
次に実際に品切れが発生したケースとして、当日の在庫が50個しかなく、その日にすべて売り切れた場合を考えてみましょう。今度は、下の表の在庫が50個のときの列に示されているように、その日の需要が本当は95個であったならば、45個の品切れが発生していたことになります。他の需要についても同様にして、品切れ数の期待値を計算すると、45×0.001+35×0.049+25×0.1+15×0.15+5×0.2+0×0.2+…+0×0.001≒7.5個ということになります。つまり、在庫を50個を持って、それが売り切れたとすると、販売機会損失数は7.5個、金額にすると30×7.5=と期待されるということになります。

正味の販売機会損失は、最適在庫数を保有したときとの差分なので、結局、下の表のように求めることができます。(これが、品切れした日に需要平均と同じ数だけ売れたからと言っても販売機会損失はゼロではないことの計算根拠でもあります。)

[さらに厳密に]
上記の販売機会損失は、品切れの発生だけを考慮しています。しかし、在庫数が変わるということは、実際には、品切れだけでなく、売れ残りも変化します。したがって、売れ残り損失の変化も考慮することで、販売機会損失の測定をより厳密に行うことができます。
先ほどの事例に戻って、売れ残りの発生を考えてみましょう。下の表に示されているように、在庫数が90個のときの売れ残り数は、例えば、需要が85個であれば5個の売れ残りが発生します。その際、発生確率が0.049なので、期待値は、5×0.049=0.254個、これに売れ残り損失単価を掛けて、金額ベースでは、0.254×0.019=0.0047円となります。以下同様に、需要分布に対する売れ残り数の期待値を合計すると、5×0.049+15×0.1+25×0.15+35×0.2+…+85×0.001=40個となります。金額ベースでは、40×0.019=0.77円となります。つまり、90個の在庫を持つということは、40個の売れ残りを計画することを意味します(想定済みの売れ残り数)。40個も売れ残り数が発生しているにも拘らず、それがなぜ最適かというと、この商品が翌日以降も持ち越して販売することができるため、売れ残り損失が1日当たり僅か0.77円に過ぎないからです。売れ残り数40個というと何やら問題ありのようにとられかねないので、売れ残り数を損失ベースの数量に換算します。商品の原価は70円なので、売れ残り損失金額を商品の原価で割って、売れ残り損失数は、0.77円÷70円=0.011個ともとめることができます。今度は妥当な感じがするのではないでしょうか。
それでは次に、在庫を50個持ってそれが売り切れた状態を考えてみましょう。売り切れたのですから、当然、売れ残り数はゼロです。つまり、売り切れの場合は、売れ残り損失という観点からは、損失が発生しないというメリットがあると見ることができるわけです。

こうして、正味の販売機会損失は、最適在庫数を保有したときとの差分なので、結局、下の表のように求めることができます。

上記から分かることは、販売期限の長い商品の場合は、当日に90個在庫を保持して40個売れ残りが生じたとしても、翌日以降に持ち越して売り切っていけるので、実際に発生する売れ残り損失はごく僅かであり、ほとんど考慮する必要もないということです。したがって、在庫を減らしたとしても余り意味がないこと言うこともできます。むしろ、品切れが起きないように、在庫は厚めに保有して品切れ損失を減らした方が効果が大きいということが分かります。ただし、いくら販売期限が長いと言っても、死に筋品の在庫は、極力抑制する必要があり、その意味で、最適基準在庫を知ることが重要なことは言うまでもありません。
しかし、これが、当日中に売り切らなければならない「おにぎり」などの販売期限の短い商品のときは、話が変わってきます。売れ残った商品はそのまま廃棄処分ということになるので、原価まるごと損失が発生するからです。つまり、販売期限の短い商品の場合は、品切れだけでなく、売れ残りも同時に考慮しなければならない、いわゆるトレードオフをうまく管理する必要があり、在庫管理の技術も難易度が高くなってきます。
次回は、このようなときの販売機会損失について検討したいと思います。
販売機会損失の測定(2)
11/11/21